管理栄養士の菊池真由子です。
今回は「酵素と酵母の違い」について解説していきます。
酵素ドリンクのブームが続いていますが、酵母を使った健康法も登場してきました。
酵素ドリンクはダイエットに効果的、あるいは美容に良いと宣伝されていることが目立ちますが、酵母はダイエットをはじめ、「健康に良い」と万能な効果を発揮するようなイメージや広告がされています。
しかし、「酵素」と「酵母」は全くの別ものです。
「漢字が似ているので混同しやすい」と推測できますが、ごくごく簡単に説明すると
【酵素】は体内で食品の消化吸収を促すための物質
【酵母】は食品類を発酵させる物質
です。
【酵素】は老化とともに減っていきますが、酵素が減るから老化が進むわけではありません。
また、前回で解説したように、酵素はタンパク質です。
従って酵素が含まれているドリンクやサプリメントを使用しても、体内で吸収される時には、アミノ酸に分解されてしまいますので、愛用者が期待するような体のなかで期待される「酵素」としては全く働いてはくれません。
よって、ダイエットや美容、アンチエイジングに貢献することはないのです。
一方【酵母】は、大豆を納豆に、牛乳をヨーグルトに変えるような物質。
食品の発酵に必須であり、酵母が増えると酵素もふえますが、その酵素は酵母のエサになるだけです。
ヒトが食べても酵素を取り入れられることもなく、体内ではなんに働きもしません。
酵母による発酵は食品を消化しやすくする、ベースになる食品の良さを引き出して栄養成分が豊富になる、風味が変わる(大豆から味噌や醤油ができる、牛乳からチーズが出来る)といったように、食生活の楽しみを大きくさせ、栄養のバランスを取りやすくする働きをもっています。
ところで、酢やみりんはお酒を発酵させたものです。
原料の一部となるお酒は米を麹という酵母を使って発酵させたものです。
これをさらに発酵させることによってアルコール成分が消えてしまい酢やみりんになるのです。
このため酢やみりんを製造するメーカーは酒の醸造免許も所持しています。
さて、注意したいのが「酵母がもたらす発酵」と「腐敗」の違いです。
適度な発酵は食事を豊かにしますが、発酵が進みすぎると「腐敗」に変化してしまいます。
間違っても、「発酵が進んで酵母がたくさん出来る」ということはありません。
腐敗をもたらす雑菌は、空気中にも存在しますし、飲用、食用するだけでも くちから雑菌が入り込んでしまうのです。
市販のドリンク類に「開封後はすぐにお飲みください」とかいてあるのはこのためです。
腐敗をもたらす雑菌は、なによりも「水」が大好きです。
もちろん、水のなかでも、ゼリーのように、ほかの食材に封じ込められている水や醤油のように塩分が高すぎて雑菌が活動できない水分もあります。(ゼリーは腐敗速度が遅いだけで、腐敗はします)
そこで注意したいのがスムージーのような水分が多い飲料。
スムージーを作るための食品のなかに含まれる水分、場合によっては氷などをいれますが、この水分は、水として自由で流動的な存在なのです。
そこに雑菌(腐敗菌)が混入すると、爆発的に腐敗菌が増え、あっというまに「腐って」しまうのです。
一定の水分がある牛乳も開封後は要注意です。
つまり、酵素は体内でしか活動せず、生き物でないタンパク質で、口から取り入れでも無駄。
酵母は「発酵」という形で食品を別の食品に変化させるだけで、酵母そのものではなく、発酵した食品に健康効果がある、というわけなのです。