管理栄養士の菊池真由子です。
厚生労働省(平成16年度版 労働衛生白書)によると
食中毒事件を原因施設別に見ると、家庭を原因とする食中毒の割合は減少傾向にあるものの、今なお全体の約20%を占めています。
食中毒対策における家庭の役割は、依然として重要である。
家庭での食中毒は、症状が軽い場合や発症する人が1人や2人のことが多く、風邪や寝冷えなどと混同され、必要な治療が行われず重症になるケースなどがあります。
とされています。(一部改変)
食中毒というと、外食先などで起きる大規模事件を連想しがちなのですが、家庭での事故も侮れないですね。
■食中毒予防のポイントは
「洗う」「加熱」「早く」が3つのキーワード!
1)洗う
日々の生鮮食料品には食中毒菌がどうしても付着してしまいます。そこで家庭での予防の最大のポイントは「菌を洗い流す」ということです。
まず食材は新鮮な材料を購入するということが重要です。
洗う時は流水で菌を洗い流すイメージですすぎます。
特に魚介などに多い食中毒菌は水に弱いのでエラや内臓を取り除いて流水で良く洗いましょう。
魚の切り身は、水洗するとうま味が逃げやすいので「新鮮なうちに食べる」ことが重要です。
調理直前まで4℃以下の冷蔵庫で保存しておきます。これも水道水で洗っておくのが良いでしょう。
また、ほかの食材に菌が写らないようにラップをかけておきます。
これらの細菌は低温では増殖しないので冷蔵保存が欠かせません。
食材だけでなく、手指や包丁、まな板、スポンジ、ふきんといった調理器具も十分洗い、乾燥させておきます。
時には漂白剤で殺菌しておくのもいいですね。
2)加熱
食中毒菌は熱に弱いために、十分な加熱で殺菌することができます。
肉類:75℃で1分以上が目安。
といっても温度を測るのは難しいので、途中でとりだして切ってみて、加熱具合を目で確かめることが大切。
中心部まで火を通しましょう。
大人がレアステーキでも乗り越える体力がありますが、子供や高齢者にはしっかり中心部まで焼いておきましょう。
卵に関しては最大の注意が必要です。
生で食べるときは表示の消費期限を厳守。
少し過ぎた場合は半熟にはせず、しっかりと加熱した固ゆでにします。
洗いにくい野菜や、鮮度の落ちた野菜は加熱が一番。
ゆでたり、炒め物にすると量もたっぷり食べるので健康効果もアップしますね。
電子レンジを使う場合は、途中で置き方をかえるなどして加熱ムラが起きないようにしましょう。
特にカレーやシチューは加熱ムラを起こし、それを混ぜると全体に食中毒菌が広がってしまいます。
容器の向きを変えながら解凍しましょう。
冷凍保存した肉やカレー類:解凍する際も要注意!!
冷凍で菌は死滅してるのではありません。
室温解凍すると活動を再開して増殖して危険性がアップ。
冷蔵庫や電子レンジで解凍しましょう。
<抗菌グッズの過信は禁物>
抗菌まな板や抗菌スポンジなどは、接触している面に触れた細菌には効果があるものの、食品全体に効果があるとは言い切れません。
抗菌ふきんやスポンジ、まな板など「抗菌」を標榜しているグッズ類も、2~3回も洗えば、通常品との差は認められない、という報告もあります。
食器や包丁、まな板などは乾燥させて収納するのがおすすめです。
軽くでも湿気を含んだふきんで拭いてしまうと、水分で活動する食中毒菌が活発化してしまいます。
清潔を求めた「ふきん」が「付菌(ふきん)」になってしまいます!
抗菌をうたった食器用洗剤の効果ははっきりとしていません。
洗うために使う洗剤量や洗い方が丁寧かどうかによっても効果が大きく変わるからです。
そしてこの洗剤を使っても、食器を乾燥させて収納しないと効果がでないのは従来の食器用洗剤と同じです。
抗菌グッズを過信せず、「洗う」「加熱」が何よりの対策です。
3)早く
新鮮な食材を料理し、出来たてを食卓に並べるのが一番。
購入した食材は調理をするまで冷蔵庫などで保存しておき、早いうちに食べきりましょう。
「ちょっとの間だから」とラップをかけたままおかずの残りををテーブルの上におきっぱなしにしていた、なんていう経験はありませんか?
ところが食中毒菌は水分と栄養が大好物。
水蒸気がついたラップで密閉されていると水蒸気と保温効果で増殖の温床になっていたのです。
お弁当のふたも同じですね。
ラップやふたをする前に手早く冷やすのがコツ。
鍋ごと、食器ごと冷水につけると手早くあら熱がとれます。
その後にラップをして冷蔵・冷凍保存しましょう。
解凍して食べる際は、再加熱が重要です。
室温でもどすのではなく、鍋やレンジで再加熱することもポイント。
しっかりと加熱して食中毒菌を死滅させましょう。
■.もし食中毒になってしまったら、どんな対応をすればよい?
代表的な症状である下痢や嘔吐は、食中毒菌が出す毒素を体から吐き出してしまおうとする体の反応なのです。
“もしかして?”と感じたら、市販薬の下痢止めなどで抑えるのは逆効果。
症状が激しい場合は救急車を呼ぶことも必要です。
素人には手に負えないのが食中毒。
早めに医師の診察を受けるのが一番です。