交渉

私が交渉に関する書籍などで繰り返し書いていることで、私の「交渉論」の根本に流れる思想があります。

それは「交渉は勝ち負けではない」ということです。

交渉は、双方が合意しなければ何の結果も得られません。
どちらかが勝ち、どちらかが負ける関係では成り立つものではありません。

この点スポーツとは異なります。
スポーツでは、「勝者」と「敗者」を決めなければなりません。

勝者と敗者を決めるため、「どうなったら勝ち」「どうなったら負け」というルールを定めます。
ルールは、勝ちと負けを決めるためのものとも言えるでしょう。

しかし、交渉は違います。

自分が幸せに生きるため、危機を脱するため、自社が利益を最大化するため、等、様々な目的のために行われます。

そこには「交渉に勝つため」などという目的はありません。

交渉の理想的な形としてよく使われる言葉に「WIN-WIN」があります。

勝ち負け(WIN-LOSE)ではない、交渉の姿を示す言葉といえます。
しかし、私は、WIN-WINという表現も必ずしも正しくないと思っています。

やはり、勝ちがあれば負けがあるのであり、両方勝つという言葉には違和感をもつのです。
では、理想の交渉の形とはどのようなものなのか、一つの例で説明しましょう。

ある年、台風や冷夏などが重なり農作物が大きな被害を受けました。
とくに大きな影響を受けたのはミカン。

各産地で出荷量が激減してしまいました。
ある日、ミカン卸業者に2つの会社が買いつけに来ました。

両社とも、方々探し回った末にこの業者にたどり着き、ここで手に入らなければ、取引を打ち切られ、倒産の危機に瀕します。

両社が必要とするミカンは、双方とも1000ケース。
価格は実勢価格とかけ離れていますが、仮に1000万円とします。
しかし、卸業者の在庫もちょうど1000ケースでした。

両社は「うちは1200万出す」「じゃあうちは1500万」と争いだしました。
値段がどんどん吊り上がっていくパターンです。

2000万、3000万と、どちらかが力尽きるまで続きそうな様相を呈してきました。
このままでは共倒れだと感じた両社は、どちらからともなく、500万円で半分ずつ買うことを提案しました。

必要な量には満たないまでも、損害を軽くすることはでき、何とか倒産を回避できるのではないか、と考えたわけです。

競りに勝って1000ケース手に入れること、折半すること、どちらの方法でミカンを手に入れても、どちらもWINにはなりません。

1000ケース手に入っても多くのお金が出ていきますし、折半であればいつもの半分の量しか買えないからです。

しかし、この両社がさらに話し合いを進めるうち、意外な事実に気づきました。
それは、一方の会社がミカンジュースを作る業者で、もう一方は、マーマレードを作る業者であるということでした。

そこで、ハタと気づきます。
ジュースを作るために必要なのは果肉の部分であり、マーマレードで必要なのは皮の部分です。

両社は、1000ケースを500万円ずつ出して買い、加工して果肉と皮を分け合えば、危機を乗り切ることができるという結論に達したのでした。

単純化した話ではありますが、これが理想的な交渉のイメージです。
これは「WIN─WIN」といえるでしょうか。

たしかに敗者はいませんが、とくにどちらも勝ってはいません。
したがって、「WIN─WIN」という表現は正しくありません。

「勝ち」という言葉は「負け」の存在を前提にするので、誤解をまねくと思います。

確かに言えることは、両社が危機を免れたこと、本来であれば1000万円払わなければならなかったところ、500万円で1000ケース分のミカンが手に入ったこと、です。

交渉の理想は、まさにこの「最適解」を見つけ出すこと。


相手も応諾できる、自分にとっての最高の結論を探し出すのが目的といえます。

交渉慣れしている人でも、相手に勝ちたい、負けたくないという感情はいつのまにか忍び寄るものです。

「WIN-WIN」という言葉を使うかどうかはともかく、「勝利」に気持ちを引っ張られることで、最適解を出すという交渉の本質を見失わないようにしたいものです。

【編集後記】

もうすぐ私の新刊が出るようです。
といっても、過去に出した本を、他の出版社が「新装版」として出したい、ということでしたので、書き下ろしではありません。

これは、内容を評価していただいたのだと思いますので、嬉しいことです。
表紙デザインを見せていただきましたが、良い感じです。

出たら、このメルマガでもお知らせします。
それまで、仕事に打ち込もう。(*・`д・)ガンバルッス!!

今日も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
そして、また次回もぜひ読んでください!

では、あなたに健康と幸せが訪れますように祈っています。

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