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室町時代に「大和猿楽」の演者として活躍、父の観阿弥とともに、能楽の完成者として知られる世阿弥。

その思想を記した『風姿花伝』は、長く能楽論、芸術論として読み継がれています。

その『風姿花伝』のなかに、このような言葉があります。

「時の間にも、男時・女時とてあるべし」

「男時(おどき)」とは、状況が自分に有利な方向にあるときのこと、逆に相手が有利な時を「女時(めどき)」といいます。

そして世阿弥は続いて、「いかにすれども、能によき時あれば、必ず、また、悪きことあり。これ力なき因果なり」と説いています。

つまり、男時、女時は避けられず、人の力ではどうにもならないということです。

これらの言葉は、能の「立合」に関する教えです。

私も調べてみるまで知らなかったのですが、当時の能には、複数の演者が同じ舞台で演じ、勝負を競いあう、立合というものがあったそうです。

当時の芸術には時の有力者の後ろ盾が必須でしたから、立合での自分の評価は、流派の存亡に関わる重大事だったようです。

世阿弥は、その立合で勝つために、男時、女時を読んで演技することが重要であることを説いたわけです。

では、状況が不利な、女時にある場合、どうすればよいのでしょうか。

世阿弥は、それがそれほど大事な場面でなければ、あえて勝とうとせず、余裕を持って演技を行い、ここぞという場面だけに力を入れることを勧めています。

この部分を読んだ時、私は

「交渉と同じだ!」

と感じました。

交渉の場では、利害が対立する相手との関係で、こちらに有利な状況になることもあれば、防戦一方になることもあり、バイオリズムのようにアップダウンを繰り返しています。

もちろん、戦略を立てて、常に「男時」でいられるよう努めるのですが、必ずしもうまくはいきません。

自分の力ではどうにもならない、世阿弥の言う「力なき因果」が働いているように感じられることがあります。

感情も常に揺れ動いています。依頼者が「絶対に譲れない」と言っていた条件であっても絶対ではなく、時間の経過や自分が置かれた環境の変化によって、「これは譲ってもたい
して重要ではないな」と、変化してゆくこともあります。

相手もまたしかりです。

この時流を読むことは、交渉を有利に進めるために大切なことです。

不利な時にでも、ずっと不利ということはないため、慌てたり感情を激したりすべきではありません。

相手の話をよく聞き、耐え、じっと流れの変化に注意していると、そのうち環境が有利に変わっていきます。

その「今だ」という瞬間に、自分の交渉カードを切ってゆくのです。

逆に、男時にある場合も注意すべきです。

有利に話し合いが進み、自分が出した条件がなんでも通るような気がしても、調子に乗るのは禁物。

その後、不利な場面が訪れると覚悟し、男時の時に、一気に解決しておくことを検討すべきです。

こちらの主張がすべて通りそうでも、相手がこの線までは納得するであろうという限界線を常に探ること。

それを超えると決裂する危険があります。

引き返しができず、完全決裂の危険が生じると、一気に形勢不利になることもあります。

今回は交渉を題材にしましたが、ビジネスでも同じだと思います。

自分の力だけではどうにもならないことがあります。

「男時・女時」を感じる努力が大切だと思います。

一度、ご自身のこれまでのお仕事等にあてはめてみてはいかがでしょうか?

【編集後記】

急に暑くなりましたね!

人はそれぞれで、「夏が好き」という人や、「冬が好き」という人、春や秋が好き、という人がいます。

生まれ月も関係あるんでしょうか。

私は9月生まれですが、夏が好きです。

汗をたくさんかきますが、それも気持ちよく感じます。

毎朝出勤前に運動していますが、汗をたくさんかいて、風呂に入ると、さっぱりして、朝から全開で仕事ができます。

これから梅雨を経て、夏になりますが、ますますパワーアップして仕事をしたいと思います。
(*・`д・)ガンバルッス!!

今日も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

そして、また次回もぜひ読んでください!

では、あなたに健康と幸せが訪れますように祈っています。

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